ミューザ川崎 シンフォニーホール
“オケ専” とかでチェックしていくわけだが,森村学園の名前はこれまでも何度か見ていた。その度に,ふぅん,こういうところがあるのか,と思った。今回,やっと聴く機会を得た。
● 開演は13時30分。入場無料だが,座席は指定。事前にメールで申込むと指定席の番号が返送されてくる。こういう時期ゆえ,良くも悪くもこの方法しかないだろう。
● 学園の案内によると,「本校の管弦楽部は,中等部1年生から高等部2年生まで約80名で活動して」おり,「その部員のほとんどは中等部に入学してから楽器を始め,中には楽譜も読めずに始めた部員も多くいます」とのこと。
それはそうだろう。小学校を卒業した段階で楽譜を読める人はまずいない。小学校の音楽の授業で楽譜の読み方など習わないからだ。ピアノやヴァイオリンを習っていたのでもない限り,それが普通だ。
● 中学生から始めるのなら早い方だ。プロを目指すにはそれでは遅いのだろうが,プロになって何かいいことがあるのかというのはよくよく考えるべき問題であって,平凡なプロになるよりはアマチュアにとどまる方が賢いのではないかと,ぼくなんぞは思っている。
平凡なプロよりは傑出した(傑出していなくても)アマチュアでいる方が,断然コスパがいいのだ。人生をコスパだけで測るのは寂しすぎるという意見もあるだろう。そのとおりだけれども,そうは言っても,人は口に糊していかねばならないのだ。コスパを等閑に付してはいけないと思う。
● 曲目は次のとおり。指揮は顧問の深井祥二さん。
ベートーヴェン 交響曲第8番 へ長調
チャイコフスキー バレエ「白鳥の湖」から抜粋
シルヴェストリ 交響組曲「フォレスト・ガンプ」
マイヤーズ カヴァティーナ
ディズニー・ファンタスティック・セレクション
● 行儀のいい生徒さんだなというのが,第一印象。先生の言うことをよく聞いて,一生懸命に練習してきたのだなと思えた。
中学生と高校生がベートヴェンの8番を演奏しているのだ。技術や技巧だけに着目するのであれば,プロオケと比べれば,アメリカのメジャーと日本の高校野球の地区大会ほどの差があるに違いない。あたりまえのことだ。
それでは,メジャーの野球は観戦するに値するけれども,高校野球は観ても仕方がないものか。もとより,そんなことはない。メジャーにはメジャーの,高校野球には高校野球の面白さがあり,観戦の視点がある。
高校野球に入れあげて,メジャーなんてと言うのもつまらないが,その逆はもっとつまらないだろう。
● 楽器を始めてまだ年端もいかぬのにここまで仕上げてくる進歩の速度は,この年代にしかないものだ。成人になってから同じようにやってみろと言われたって,できるわけがない。無理というものだ。まずはその驚異を味わう。
次は,コンミスの女子生徒がコンミスたろうと一生懸命なところ。そこもまた味わうに足る。
● 「白鳥の湖」は“情景” “4羽の白鳥の踊り” “ハンガリーの踊り” “スペインの踊り” “小さな白鳥たちの踊り” “フィナーレ” の6曲。組曲版と重なるのが半分。
“情景” の冒頭の旋律(白鳥の主題)は,白鳥の姿に変えられてしまったオデットが,王子に向かって「ここよ。私はここにいるのよ」と切なく訴える,その訴えの音楽的アイコンになっている(と思っているのだが)。
トップバッターのオーボエが,そのオデットの切ない訴えをどこまで載せて歌えるか。ここが聴きどころ。ここが上手く行けば,あとは流れのままに。・・・・・・上手く行った。
● このあとは映画音楽。マイヤーズ「カヴァティーナ」は「ディア・ハンター」で使われているらしい。らしいというのは,ぼくはこの映画を見ていないからだ。
「フォレスト・ガンプ」も見ていない。何だか恥ずかしくなってきた。「ドラえもん」の劇場版ばかり見ていてはいけないかもなぁ。「ドラえもん」は「ドラえもん」で面白いんだけどね。
● ディズニー・セレクションはアンダー・ザ・シーなど7曲。重いものを先にこなして,最後ははじけて終わるという趣向だったのだろうか。
3年生はこれで部活を終えて,これからの1年間は受験に専念するんだろうか。少し早すぎる引退のようにも思えるけれども,都会ではこれが普通なんだろうかね。
0 件のコメント:
コメントを投稿