2013年4月30日火曜日

2013.04.30 ウィーンの楽聖-ベートーヴェンの歌曲と室内楽曲

宇都宮市文化会館 小ホール

● ベートーヴェンの歌曲,CDを含めて一度も聴いたことがない。ヘタすると,ベートーヴェンが歌曲を作っていたことに気づかなかったりする。
 っていうか,シューベルトやマーラーの歌曲もあまり聴いたことはないですね。やや敷居が高い感じ。

● 要するに,何ですねぇ,自分が聴いている音楽なんて,ほんの一部でしかないってことなんですよね。器楽曲の中でも,交響曲と協奏曲,あとはピアノとヴァイオリンのソナタを少し。そんなものだ。その交響曲や協奏曲にしたって,聴いているのは大海の一滴。
 ライブで演奏される機会が少ないのは,CDでも聴かない傾向があるからね。

● そこを軌道修正して,聴くべきものをピックアップしたうえで順番に聴いていくってのは,聴き方として邪道のような気がする。ピュアじゃないっていうか。
 音楽を聴くことに関しては,勉強ってしたくないし。行きあたりばったりの偶然任せでいい,と基本的には思ってるんですけど。
 とはいってもなぁ。一方で,たくさんのものを棄ててるっていう自覚もあってね。これでいいのかなぁと思うことがときどきある。

● ともあれ。今回はベートーヴェンの歌曲と室内楽曲。開演は午後7時。チケットは2,000円(指定席)。
 ぼくの席はかなり後ろになった。買い出動が遅れたからだけど。ごく小規模な演奏会だったから,最前列でも前すぎるってことはなかったかな,と開演後に気がついた。
 ほぼ満席。きちんと身なりを整えてきてたご婦人方が多かった。

● 第1部は歌曲で,「アデライーデ」「遙かなる恋人によせて」「愛されない者の溜息と愛の返答」の3つを井上雅人さん(バリトン)が歌った。ピアノ伴奏は川口成彦さん。
 井上さんはナビゲーターも務めてくれて,豆知識をいくつか得ることができた。たとえば,「愛されない者の溜息と愛の返答」は「第九」の元(「幻想合唱曲」)の元だってこと。たしかに,「第九」4楽章の例の旋律によく似たフレーズが登場するのだった。
 川口さんからは,ピアノの名手でもあったベートーヴェンは,「デリケートな弱音」に意を用いた人だった,っていう説明があった。
 ぼく的に最も印象に残ったのは,青木海斗さん(芸大の4年生だそうだ)が歌った「君を愛す」。声が若くて,そこが新鮮。曲も(たぶん)単純で,初心者にもわかりやすかったからだと思う。

● 井上さん,素の声も良くてねぇ。声質がいい人って羨ましいなぁ。うっとりするもんねぇ。かなりのアドバンテージだね。

● 15分間の休憩のあと,第2部。ピアノ三重奏曲第7番「大公」が演奏された。
 ピアノが黒岩悠さん,ヴァイオリンが三又治彦さん,チェロが玉川克さん。錚々たるメンバーといっていいんでしょうね。
 演奏時間は約40分。この間,ずっと集中を切らさないでいるのは大変なことだと思う。
 曲に背中を押してもらえることもあったりするんだろうか。

● 堪能できた。平日の夜をこんなふうに過ごせるとは,良い時代に生まれ合わせたものだ。

● 可能であれば,佳人とふたりでこの時間を過ごし,終演後は歩いて近くのワイン・バーに行き,よく冷えた白を飲みながら余韻に浸りたいものだ。
 そこまでが音楽環境というものだな。が,なかなかね。ここは宇都宮だ。チェーンの居酒屋はいくつもあるけど,大人がくつろげるワイン・バーなんてのがあるのかどうか,ぼくは知らない。
 まず,佳人がいない。いたとしても,彼女がぼくを相手にするとは思えない。高望みはいかんね。

● っていうか,以上は大嘘。
 音楽を聴くときに,家族だろうと友人だろうと同僚だろうと,隣に知り合いがいるっていう状況は,正直,イヤだ。かりに,知り合いが一緒に行きたいと言ってくれても,会場では離れて座ってくれと頼むだろう。
 終演後に,いま聴いたばかりの音楽について誰かと語るのもイヤだ。もっと言うと,たまたま会場に知り合いが来てて,彼なり彼女なりから声をかけられるのもイヤだ。徹頭徹尾,ひとりでいたい。

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