約2時間のコンサートが終了した直後の満足感は,他のものでは代替できません。この世に音楽というものが存在すること。演奏の才に恵まれた人たちが,時間と費用を惜しまずに技を磨いていること。その鍛錬の成果をぼくたちの前で惜しみなく披露してくれること。そうしたことが重なって,ぼくの2時間が存在します。ありがたい世の中に生きていると痛感します。 主には,ぼくの地元である栃木県で開催される,クラシック音楽コンサートの記録になります。
2013年5月6日月曜日
2013.05.03 第18回マーキュリーバンド定期演奏会
宇都宮市文化会館 大ホール
● 初めて聴く機会を得た。っていうか,今まで知らないでいた。
マーキュリーバンドは「宇都宮商業高校吹奏楽部OB・OGを中心に結成」され,「名称は商業の神,「マーキュリー」から付けられました」とのこと。
開演は午後2時。入場無料ということもあって,さほどに期待もしないで行った。のだが。
● 内容は2部構成。
第1部はシベリウスの「フィンランディア」とスパークの「シンフォニエッタ第4番」。
吹奏楽で「フィンランディア」を演奏するとこうなるのか。ロシアの圧制に立ち向かおうと,フィンランド人を鼓舞する曲だから,吹奏楽で演奏することに何の違和感もない。
安心して聴いていられた。若い高校生の演奏もいいけれども,大人の演奏もいいよなぁ,と。大人といっても,女性団員の平均年齢はだいぶ若そうだ。フレッシュでもある。
● 練習は毎週土曜日とのことだ。社会人の集まりなんだから,練習する時間はそうそうはないのが道理だ。
もともと相当な心得のある人たちが参加しているのか。土曜日以外にも個人的に練習を重ねている人が多いのか。あるいはその両方か。
● 第2部は,「THE対決! 昭和VS平成」と題して,昭和と平成を代表するアニメ,刑事ドラマ,歌謡曲(平成のはJポップと言った方がいい?)から,それぞれいくつかの曲を演奏。
客席へのサービス効果は満点。企画の勝利ではあるんだけどさ,それもね,演奏がしっかりしていればこそなんだよね。
● その後は,「君の瞳に恋してる」「虹の彼方に」と演奏し,最後は「シング・シング・シング」で締めた。
「シング・シング・シング」は聴きごたえ充分。指揮者も務めた鈴木章郎さんと五十嵐貴宏さんの,クラリネットとトランペットはさすがと申しあげるほかはない。
それとドラムがおいしいね,これ。巧いもんですなぁ。左右の腕を違ったリズムで動かすってのは,曲芸に近くない? 人間って訓練すればこういうこともできるようになるんだなぁ。
さらに趣向をこらしたアンコール。
吹奏楽もいいなぁと思いましたね。管弦楽をメインに聴いてきたけど,こうして上質の吹奏楽を聴いていると,こっちもいいわ,って。
● もうひとつ,見どころがあった。鈴木さんの指揮ぶり。
指揮法は独学で勉強されたかに思われるんだけど(違うかもしれない),ひと言で言うとしなやかな印象。柔らかいと言ってもいい。若いときにきちんと基礎をマスターしてるっぽい。年季が入っている感じ。
奏者への指示も明確。ということはつまり,楽曲を充分に消化しているわけで,本業のかたわら,この演奏会に向けて勉強を重ねてきたんでしょうね。放っておけば錆びつくものだろうから。
● というわけで,失礼な言い方ながら,思わぬ拾いものをしたって感じ。ここまでの演奏を聴けるとは想像していなかったので。
このパターンが一番嬉しいですな。次回は来年の5月5日の予定。
● 以下,余談。
ここまでやるのであれば,有料チケット制にしてもいいのじゃないかと思った。このへんは,もちろん主催者の自由裁量の範疇に属することがらであって,ぼくなどが口をさしはさむ余地はないものだが,そこをあえて申しあげると,無料の演奏会ってそもそもが不自然だと思う。
だって,時間をかけてきたのだろう。エネルギーを注いできたのだろう。それがどうしてタダになるのだ?
● 演奏する側がアマチュアで,自分たちが好きでやっていることであっても,だ。聴いていただく,のではない。聴かせるのだから,500円でも700円でも取るべきだ。
● チケットの印刷代とか手間といった徴収コストを考えると,少しばかりのお金をもらうよりタダにした方が安あがりだ,ってこともあるかもしれない。
お金を取れば集客にはマイナスに作用する。どうせなら大勢のお客さんの前で演奏したい。それはそうだ。
でも,それらが無料にしていい理由になるのかどうか。
以上,天の邪鬼の繰り言でした。
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