栃木県総合文化センター メインホール
● 今年で8回目になるこの第九演奏会。ぼくは第2回から聴いている。第4回は聴けなかったので,今回が6回目になる。
ぼく的には年中行事になった感がある。この時期は第九。演奏するほうもそうでしょうね。この時期には第九を演奏するもんだって。8年間続いているんだからね。
● 今回もメインホールがほぼ埋まった。「第九」は間違いなくお客さんを呼べる鉄板なんだけど,それでも年々わずかずつ,空席が増えているようにも思われる。すべての催事には飽きが忍びよるものだってか。
ということより,問題はもっと具体的で,新規参入者がいないのだろうな。高齢で外に出れなくなった人がいるはずだ。その分を補うだけの新規参入者がいない。そういうことなのだと思う。
● が,それはぼくが考えたところで,どうなるものでもない。ぼくは自分が楽しむことだけを考えればいいのだ。
そう。楽しめばいい。休日の午後,カフェでもなくレストランでもなく,デパートでもなく遊園地でもなく,コンサートホールに来るのは楽しめると思うからだ。
● 管弦楽は栃木県交響楽団。厳密には違うらしいのだが,まぁ栃響と言ってしまっていいのだろう。指揮は荻町修さん。
ソリストは,高島敦子さん(ソプラノ),栁田明美さん(メゾ・ソプラノ),上野尚徳さん(テノール),村山哲也さん(バリトン)。
合唱団は栃木県楽友協会合唱団。第1回からずっと皆勤している団員もいるのではないかと思う。
● 「第九」の前に,ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲。
毎年,同じ曲を演奏していても,年によって出来不出来ができることは避けられないはずだ。演奏開始後早々に,今回の演奏がどのくらいの出来になるか,奏者側は見当がつくんだろうな。
なぜかというに,客席にいてもわかるんだから。
● 今回の演奏は第1楽章が始まってすぐに,けっこうすごいことになるんじゃないかと思わせた。
ぼくは第1楽章が最も高揚する。第1楽章が終わると,あぁ第九を聴いたな,と思う。
今回は聴きごたえのある第1楽章になった。第1楽章が終わったあと,客席から拍手が起きてしまったけれども,拍手したくなる気持ちには共感できた。
● 第1にオーボエの功績であり,第2にフルートの功績であり,第3にクラリネットの功績であり,第4にホルンの功績である,と単純化したくなるんだけれど,そういうものではないよねぇ。
木管やホルンから引き継いだあとの弦の豊かさ。艶やかにうねって,密やかに沈んでいく。
● 「第九」は毎年一度ならず聴くものだから,ぼくとしては一番ポピュラーなクラシック楽曲になっている。ぼくに限らず,そういう人は多いのではないかと思う。
で,馴染みがあるものだからつい,奏者に求められる技術の高さのことを忘れてしまう。この曲をここまで演奏してもらって,それを1,500円で聴かせてもらえれば,聴衆はもって瞑すべし,かもしれないよね。
● 途中,何事もなくとはいかないにしても,順調に進んで,第4楽章。
あの有名な旋律が現れる。コントラバスとチェロが奏で,ヴィオラに引き渡し,1stヴァイオリンが引き継ぎ,ついには管弦楽全体が響かせる。この間の荘重感は,ベートーヴェンというより音楽界が,あるいは人類が,到達しえた最高地点のひとつかもしれない(というと,最高がいくつもあることになって,言葉的には具合が悪いんだけど)。
● 人の声はあらゆる楽器を超えて,聴衆の耳目をひくもので,合唱が登場してしまえば,その場を支配するものは合唱になる。
中でもソプラノが目立つ。独唱も合唱も。高島さん,リラックス感をただよわせていた。
● この「第九」を聴くと,今年の終わりが見えてきたような気になる。だけど,まだ24分の1は残っているんだよね,今年が。
諦めちゃいけないよ。まだ,終わってないよ。と,自分に言いきかせておく。
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