2019年9月9日月曜日

2019.09.08 新国立劇場 公演記録映像上映会 ラインの黄金

新国立劇場 情報センター

● ワーグナーの「ニーベルングの指環」は仰ぎ見る楽曲のひとつ。というか,その最高峰。この“楽劇”を生で,しかも4日連続で,見る機会はぼくにはついに訪れないだろう。と,自分で思っている。
 とはいえ,諦めるには及ばない。ぼくらは21世紀に住んでいるのだ。そのうち,すべてをネットで見られるようになるかもしれない(現状ではなっていないと思う)。

● DVDもある。ぼくもハリー・クプファー演出,ダニエル・バレンボイム指揮による1991年のバイロイト祝祭劇場版を持っている。
 そういうものでいいじゃないか。生にこだわっても仕方がない。DVDで鑑賞しましょうよ。

● そのDVD,2013年5月に一度観た。とにかく最後まで観た。しかし,その後は一切手にしていない。つまりは,もう一度観たいと思っていない。
 ぼくには荷が重すぎるんだろうかなぁ。良さがヴィヴィッドに伝わってこない。ゾクゾクしながら物語にのめり込むことができなかったんですよ。
 つまらない映画だなぁと思ってみてたようなところがある。DVDだからかもしれない。しかし,ワーグナーの代表作であり,ドイツオペラの最高峰でありとなると,ピンと来ないのは自分に原因があるのだろう。
 ので,もう一度,別の演出のものをと思っていた。このDVDじゃないものを観たらどうだろう,自分はどう反応するだろう,と。

● というところへ,この上映会があることをTwitterの情報で知った。新国立劇場の情報センターでは「公演記録映像上映会」を開催しており,9月は「指環」4部作を日曜日に1作ずつ上映する。
 迷わず,行くことに決めた。DVDをパソコンの画面で観るより,よほど臨場感もあるでしょ。家で1人でってんじゃなくて,知らない人たちと一緒に観るってのもいいんだよね。

● オペラシティの方には何度か行ったことがあるけれど,新国立劇場は初めてだ。ここはオペラとバレエ。しかも,それ相当なものが来るんでしょ。すなわち,ぼくには分不相応。
 新宿からは京王新線に乗ってみた。乗るのはひと駅。初台まで。すぐだ。が,迷路を長く歩かされる。これなら甲州街道を歩いた方が速いんじゃないか。実際にはそんなことないんだけど,そう思いたくなる程度には手間がかかるんだな,この乗換えは。

● 開演は10時半。田舎から出向くには朝が早いのが難といえば難。しかし,文句は言うまい。
 途中,15分の休憩を入れて,13時半に終わった。「ラインの黄金」は4部作の中で最も短い。それでも,これを1人で観てると,休憩1回ではすまない。たぶん,何度も休んでしまうだろう。疲れるから。
 こういう強制が働くのはありがたいのだ。「ワルキューレ」以降はさらにそうだ。

新国劇の屋上庭園
● これは,2015年に新国劇で上演されたものの録画。カーテンコールまで収録されていた。
 のだが,恐れながら申しあげると,あまり面白いと思わなかった。全般的に冗長さを感じてしまう。いや,ワーグナーの最高傑作なのだ。冗長さを感じるなど,ぼくがちゃんと観れていなからに決まっているのだが。
 うーむ,ぼくは縁なき衆生で終わるかもしれない。

● ラインの水の精がどうしてばあちゃん3姉妹なんだよ,とか思ってしまった。これね,生のステージを観てたのなら,あまり思わないんですよね。
 ルックスが役柄に沿っていないと観てて苦しくなるのは,録画だからなんだよね。生の舞台だったら想像力で補正するのはそんなに難しくないんだけど,録画でそれをやるのは相当な難事だ。

● でも,そういうことは些事。自分が縁なき衆生で終わるかもしれないと怖れるのは,ワーグナーの創作世界にどうやら入っていけなさそうだからだ。
 ワーグナーは新しい神話を作ろうとしたんだろうか。壮大なんだけど,創作力だけをとればワーグナーより新海誠さんの方が上じゃない? とか思ってしまうんですよねぇ。縁なき衆生か,やっぱり。

● ところで,この「公演記録映像上映会」なんだけども,入場無料で事前予約不要で,ただし先着40名限定だよ,と。
 9月は「指環」なんだけど,毎月,なにがしかの上映をしている。のみならず,個人で使えるブースもあって,「過去の公演の記録映像」を観ることができる。今回の会場であるビデオシアターも3人以上で借りることができる。

● 首都圏に住んでる人は羨ましいとなるのだが(いずれはインターネットですべて閲覧できるようになってほしい),ではここに来ている人たちは,オペラやバレエや演劇の鑑賞マニア,演者の卵,研究者という人たちかというと,たぶんそうではない。公立図書館と同じように,暇をかこつ年寄りが多いのかも。
 いや,特に根拠はないんだけれど,そういう印象を持った。たぶん,間違いないと思う。

● 今回の上映会もどういう人たちが来るかというと,ゴミのような爺婆が10人,オペラ大好きあるいは自分もステージに立つ側の卵と思われる人10人,ぼくのようなノンポリ20人。だいたい,こんな割合じゃなかろうか。
 おそらくだけど,次の「ワルキューレ」は今日より少なくなるだろうと思う。先着40名限定の枠に入れず,鑑賞できないという事態は考えなくていいと思う。

● 2015年の3月に「マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ」と「オペラ映画 椿姫」を観たことがある。どちらもたっぷりと楽しめた記憶がある。記憶だからアテにはならないんだけど。
 ふたつとも最初から映像にするために撮影している。ライヴの録画ではない。だから比較してはいけないんだけども,映画の「指環」って,ひょっとしてすでに撮影されてない?(→ ありますね)
 こういうものでとりあえず興味をつなぐのは充分にありだとぼくは思う。

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