シネマライズ
● 1958年の収録。マリア・カラスがパリのオペラ座にデビューしたときの様子をそっくり撮影したもの。
これは見ておいた方がいいぞと思って,渋谷のシネマライズへ。上映は今日から4月9日まで。1日1回,14時10分から。チケットは2,500円。プログラムは別売で1,000円。
● よくぞ撮っておいてくれた,と思う。これがマリア・カラスなのか。客席を圧倒するオーラ。あきれるほどにチャーミング(ステージ上では)。
その日の客席には,チャップリンをはじめ,ブリジッド・バルドーやイブ・モンタンもいた。フランスの大統領も。
● 映像は当然モノクロだけれども,画質は悪くない。1週間前に見た「椿姫」の映画では,スクリーンとの間にかなりの距離を感じたものだけれども,今回は,臨場感があった。ぼくもオペラ座に座席を占めて,彼女のライヴを見ているような気分になった。
というと,いささか以上に言いすぎなんだけど,実際のライブを録画したものであることが大きいんだと思う。ドキドキしながら見ることができた。
● もちろん,本物のライヴに比べれば,入ってくる情報量は数分の1だと思うんですよ。それは仕方がない。
観客の様子をもう少し映してくれるとよかったかなとも思う。
● ライヴは2部構成。
第1部は,ヴェルディ「運命の力」序曲から。管弦楽はもちろん,パリ・オペラ座国立劇場管弦楽団。指揮はジョルジュ・セバスティアン。
そのあと,マリア・カラスが登場して,ベッリーニ「ノルマ」から4曲,ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」から3曲を歌う。
再び,管弦楽がロッシーニ「セビリアの理髪師」序曲を演奏し,カラスが「セビリアの理髪師」から“今の歌声は”を歌って,幕が下りる。
● 客席へ挨拶は,首をちょっと曲げるだけ。腰を折ることはない。その仕草がまぁエレガント。
ドレスを着たら日本式の腰を折るお辞儀はいけませんね。折るとしても,ごく浅くでいいと思う。
● 「綺羅星のようなセレブリティが列席」していた。フランスの上流が好むのはこういうものか。わかりやすいのが好きなんだなと思った。オレとあんまり変わんないじゃん,的な。
が,チャップリンやイブ・モンタンが楽しみのためだけに来ていたとは思いにくい。ぼくの考えが浅はかなのだろう。
● 第2部はプッチーニ「トスカ」の第2幕。これはもう感涙もの。歌はもちろんだけれども,演技の素晴らしさはどうだ。
共演したティト・ゴッビも絶品。役に入るというより,役を磨きあげてる感じがした。
スクリーンなのに,終わったらかなり疲れていた。椅子から立ちあがるのがけっこう億劫だったから。
● 無頼の設えにも興味があった。オペラ座ともなれば,ましてマリア・カラスのガラ・コンサートともなれば,本格的な設えになるんだろう。
その本格的な設えをぼくは見たことがない。スクリーンでもいいから,どんなものなのか見てみたかった。で,その渇は癒やされた。そうか,本場のオペラはこういうふうに設えるのか,わかったよ,って感じで。
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