栃木県総合文化センター メインホール
● 邦楽に関しては,大げさにいうと,先月7日に宇都宮市文化会館で聴いた「第8回学生邦楽フェスティバル」が画期になった感じ。古くさいとか,後ろ向きとか,地味とか,年寄りっぽいとか,世襲とか,何の根拠もなく持っていたそうした固定観念を払拭できたと思っている。
考えてみれば(考えるまでもなく),箏や尺八を演奏する人たちは,面白いから,興味深いから,楽しいから,やってきたはず。いやいややっているのであれば,いくらやったところで,すぐに天井にぶつかるだろうし,第一,長く続けることなんてできないだろう。
● というわけで,今回の県芸術祭の邦楽も覗いてみる気になった。開演は午前10時20分。チケットは1,000円。当日券を購入。
終演は午後3時半になった。その間,休憩なし。もちろん,昼休みもなし。ぼくも昼食抜きでつきあった。一度だけ,トイレに行かせてもらったけど。
● 県内にある演奏団体が総出演したのだろうと思う。それぞれの団体の発表会のようなもの。もちろん,ひとりで複数の団体に所属している場合もあるから,何度も登場する人がいる。尺八に多かったようだ。
● 曲目は全部で18曲。トップバッターは双調会栃木県支部。「八千代獅子」を演奏。箏の奏者の中に若い男性が一人いた。その彼の姿勢がきれいでうっとりした。
● 4番目に登場したのが沢井箏曲院宇都宮研究会。先月の「第8回学生邦楽フェスティバル」のときと同じメンバーが同じ「石橋」(しゃっきょう)を演奏。垢抜けているという言い方は変なんだけど,泥くさくないっていうか,軽いっていうか,不純物がないっていうか,そんな感じね。って,どんな感じなんだ?
司会者がメンバーの全員が芸大邦楽科の卒業生か現役生だと紹介していた。
● 5番目に登場したのは坂本玉宏会。江戸信吾さんが作曲した「虹の彼方に」を演奏。ひたすら典雅。
作曲した江戸さんも演奏の列に加わった。その江戸さん,坂本玉宏会の家元に就任し,就任披露の演奏会を東京の日経ホールで開催するそうだ。
この世界にも家元があることを,恥ずかしながら初めて知った。正確には,家元という言葉がある,あるいは家元という言葉を使っている,ということですかね。
● 8番目に再び,沢井箏曲院宇都宮研究会。沢井忠夫作曲「独奏箏と箏群のための詩」。
度肝を抜かれるほどにダイナミックな曲。前衛的と言っていいんでしょうか。西洋のクラシック音楽でいう幻想曲のような印象をぼくは受けた。箏の奏法のほぼすべてを見せてくれたのではないかと思えた(いえいえ,ほんの一部ですよ,って言われるのかもしれないけど)。
司会者が主宰者である和久さんのエピソードを紹介した。沢井さんの内弟子を経験したこと。料理しながらも本を読んで勉強していたこと。そこまでやらなくても,いつ寝るのか,と周囲に言わしめたこと。芸大を受験する弟子を自宅に泊めて指導すること。熱い人なんだね。
● 最後(18番目)は三曲協会の役員が,福田蘭童作曲の「夕暮幻想曲」と「笛吹童子」を演奏。福田蘭童は芳賀町ゆかりの人。名前くらいはぼくも聞いたことがある。が,何をした人なのかってのは,今回初めて知るに及んだ。
● どの団体も礼の仕方が美しいのはさすが。胸をせりだすようにしながら腰を折ると,きれいに見えるのかなぁ。
箏をやってる人って,茶道とか華道の心得も普通に持っているものなのか。初歩的な質問で申しわけないけれど,機会があったら訊ねてみたい。
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