2012年11月12日月曜日

2012.11.11 第66回栃木県芸術祭 バレエ合同公演


栃木県総合文化センター メインホール

● 県芸術祭のバレエ公演。開演は13時30分。入場無料。
 栃木県洋舞連盟という名前の団体があって,そこが県芸術祭のバレエ部門をいわば請け負っているようだ。洋舞連盟とは何者かといえば,栃木県内にあるバレエ学校の連合体。

● が,そんなことはどうでもいいですよね。ぼくらはバレエを観に来た。バレエを観て,すごいなぁ,きれいだなぁ,と驚きたい。ステージでどんなダンスを見せてくれるのか。それがすべて。

● まずは「ダンスセンターセレニテ」の生徒さんたちのダンス。ソロの「笑う風」から始まって5つのダンスを披露。創作ダンスってことになるんですか。
 いずれも見事な動き。刻々と変わっていくラインも見応えがありましたね。
 ただですね,創作ダンスっていうのは,絵画でいえば抽象画のようなものなのですかねぇ,どこを鑑賞すればいいのかがよくわからないんですよ。身体能力の高さが生みだす動きを,すげえやと思って観てればいいんだろうか。それとも,演出者が何を表現したいのか,そのテーマを感じるという心構えで観た方がいいんでしょうか。
 要するに,難解なんですね。ぼくが勝手に難解にしちゃってるだけなのかもしれないんだけどね。

● 次は「みどりバレエスタジオ」。
 最後のふたつのソロ(「白鳥の湖」より パ・ド・トロワ 第1ヴァリエーション,「眠れる森の美女」より フロリナ王女のヴァリエーション)の印象が強くて,最初の「謝肉祭」の記憶がおぼろになってしまった。
 魅せてくれますよね。当然,相当に鍛錬しているんだろうけど,ステージで表現するときには,その鍛錬の跡を消さなければならない。消せてるもんなぁ。軽々とやってるように見える。

● 着地がぐらついたぞとか,中心がちょっとずれたなとか,そういう審査員(いじわる爺さん)的見方をしてしまうこともあるんだけど,そんな見方をしているのは,見る方が未熟なんでしょうね。
 公園に行ってわざわざ落ちているゴミを探して,それだけを見て帰ってくるようなものだ。阿呆としか言いようがない。そうならないようにしないとね。

● 15分間の休憩の後に,「髙久舞バレエスタジオ」。
 「デフィレ」,見応えあり。ダンサーのレベルが高い。恐れ入りましたって感じ。
 けど,印象に残ったのは「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の方でした。有名なモーツァルトのセレナード第13番にどんなダンスを合わせてくるのか。この曲に合わせて踊るって,難しくないですか。素人考えですけどね。どこで入るのか,どこで変えるのか,けっこう合わせづらいような気がする(そんなこともない?)。
 それに対するひとつの解答を見せてもらったってことですね。

● 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」とは小さな夜の音楽,文字どおりの小夜曲ってことだけど,1楽章には弾むような明るさがある。ねぇねぇ,これから楽しくお喋りしましょうよ,っていう。2楽章は落ち着いた幸福感が漂う。しかもかなり上品な。
 ぼくなんぞは,夜はメシ喰って風呂入ってテレビ見て寝るだけなんだけど,モーツァルトが描いた夜は貴族の夜だもんな。働かなくても喰えていた特権階級の人たちの夜。早起きなんかする必要ないから,夜を長く過ごせたんだろうね。
 その曲をダンスと一緒に味わえるのは,当時の貴族以上の贅沢だよねぇ。ま,貴族たちは大きなホールじゃなくて,自分の家でそういうことをしてたんだろうけどさ。

● 最後は「クラシカルバレエアカデミーS.O.U.」。
 演しものは「Bersagliere」「Sing Sing Sing」「ナポリ」の3つ。いずれも8月の発表会で観させてもらっている。が,3ヶ月以上も前のことで,細部は憶えていない。したがって,初めて観るような新鮮さで観れるわけですね。

● 8月のこの団体の発表会がぼくのバレエ開眼になった。バレエを観ることの楽しさ,面白さを教えてもらったと思っている。
 じつはその前に,ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエの「白鳥の湖」公演を観てるんですよ。でも,そのときはあまりピンと来なかったんだよねぇ。
 高級すぎたのかもしれないけれど,それ以前に,こちらの受入れ準備がまったくできていなかったんでしょうね。真珠を与えられた豚のようなものだったってことね。バレエなんて自分には無縁のものだと思っちゃいましたからね。
 それを修正する機会を得たのは,じつにどうもラッキーだった。これほどきれいなものを観ないままで死んでいったかもしれないんだからさ。

● で,あらためて3つのダンスを観て,いいものだなぁ,と。水準高いですよね。これだけの数をこれだけのレベルで揃えられるということが,言うならひとつの驚き。

● 最後のあとに,特別サービスっていうか,「全国バレエコンクール入賞者によるエキシビション」があった。
 4人登場。本橋周子さんの印象が強い。ソロのモダンダンス。高く跳び,ピタッと停まり,不安定な姿勢を維持する。それを支えるものを身体能力と呼ぶとすると,彼女の身体能力は相当なもので,要は選ばれた人にしかできないダンス。しかも,今の彼女にしかできないはずのもの。

● 芸術っていうけれど,すべての芸術の起源はエンタテインメントのはずだ。芸術は娯楽成分を持つ。その成分が皆無のものは消滅するしかない。
 だから,鑑賞者として芸術なるものに向かう場合,「勉強」するという姿勢だけでは辛すぎる。っていうか,それじゃ芸術とはつきあえない。楽しむという下世話な部分がないと。そのためには,芸術なるものに対して,どこかでタカを括っていないといけないような気がする。
 でも,同時に,自分にはとうていできないというものじゃないとね。自分にもできそうなものにかかずらうのは時間の無駄だもん。
 4人のステージを観ながら,そんなことをぼんやり考えていた。終演は16時。幸せな2時間半でしたね。

● 一階席はかなり埋まっていた。子供たちが多数出演するから,親や家族,親戚が集まる。鉄板の客層がいるってことだよね。
 ということはつまり,乳幼児も付いてくるというわけで,泣き声やママ,ママって声が絶えないことをも意味する。さすがに誰かが主催者に苦情を申したてたようだ。後半が始まる前に,「小さなお子さまをお連れの方」に対して,泣いているときはロビーで休ませてくださいとアナウンスしてたから。
 しかし,それで止むほとヤワじゃないわけでね。そういうものだと諦めてしまえば,さほど気にもならなくなる。

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