ミューザ川崎 シンフォニーホール
● 15時開演の東京佼成ウインドオーケストラの演奏会が終演してすぐに(終演後のセレモニー拍手には参加しないで)会場を飛びだし,バス停に向かった。
ほどなく来たバスに乗って,JR宇都宮駅に着いた。新幹線ホームに立った。
● 新幹線は自分には無縁の乗物だと思っている。新幹線に乗らなければ行けないようなところには行く必要がない,と嘯いてン十年生きてきた。とはいえ,数年に一度は萬やむを得ない仕儀がある。
今日は19時には川崎に着いていたい。なぜなら,19:30からミューザで東京アマデウス管弦楽団の演奏会があって,何を考えていたのか,チケットを予約してしまったからだ。
われながら痛恨のミスを犯してしまったのだが(つまり,予約したときには地元で東京佼成ウインドオーケストラの演奏会があるのを失念していたわけだ),自分のミスの落とし前は付けなきゃしょうがない。
● 宇都宮発17:47のつばさの座席指定を受けていたのだけど,1本前のやまびこに間に合ったので,やまびこの自由席に乗車した。新幹線はガラガラだと聞いていたが,そうでもないぞ。JRのためには慶賀に耐えない。
東京から東海道線で川崎着。全ては順調。宇都宮市文化会館からのバスの時刻をはじめ,新幹線の時刻も事前に調べておいて,予想していたとおりの流れになった。
● しかし,だ。こういうことを人様にお勧めできるかといえば,まったくできない。ほとんどの人は,勧められても従わないと思うけどね。
ダメなんだよね,こういうのは。なぜか。“聴きに行く” という力が分散されてしまうからだ。1つの演奏会に向けるベクトル量を10だとすると,ダブルヘッダー(しかも1回目と2回目の会場が離れていて,移動するのに時間がかかる)になると,0.5に減ってしまうのではなくて,0.3になってしまうのだ。力の総量が小さくなる。分ければ漏れる,ということね。力の向きも分散されるからね。
● しかも,22日から25日まで都内のホテルにいた。当初の予定ではもっと長く逗留しているはずだったのだけど,26日に地元の那須野が原ハーモニーホールで演奏会があったので,26日の朝に帰途に着いたのだ。
そうして今日,27日は川崎に来て,19:30開演の演奏会を聴くのだから,今夜は泊まることになる。
だったら,26日と今日の昼間の演奏会のチケットは放棄して,ずっと東京に泊まっていた方がよかったんじゃないかと,どうしたって思ってしまうわけだよね。
しかし,ですよ。ともかくミューザに着いたわけです。新幹線の速さは偉大でありました。
しかし,室内楽演奏会を含めても,現在まで5回しか聴いていないのだ。直近では2018年6月の第8回室内楽演奏会。コロナ期間を除いて考えても,ポツンポツンとしか聴いていない。どうしてこういうことになったのか。
● 開演は19時30分。全席指定。席種の別はなく,チケットは2,000円。
プログラムは次のとおり。指揮は石川征太郎さん。
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番
ブルックナー 交響曲第6番 イ長調(ノヴァーク版)
● ブルッフのヴァイオリン協奏曲では,プログラム冊子の写真よりはるかに美人の金川真弓さんが登場。しなやかでふくよかで思い切りが良くて。世界水準とはかくもあるか,と思った。
日本を代表するヴァイオリン奏者といえば,五嶋みどりさんをはじめ,何人もいると思うのだけども,そうした人たちの演奏と今日の金川さんの演奏を聴き比べても,ぼくの耳ではその違いがわからない自信がある。
それを困ったことだとはあまり思っていない。しょうがないでしょうよ。そこまで耳が開発されてないもん。開発されてるくらいだったら演奏する方に回ってますよ。
っていうか,その違いってほんとにあるんだろうかと,どこかで疑ってもいるんですよ。その違い,皆さんにはわかるんですか。
● ブルックナーの6番。ブルックナーを生で聴くのは,ずいぶん久しぶり。緻密さを保った積極果敢という印象になりますか。相当なものでしょ。ブルックナーをここまでやれるところは,首都圏でもそんなにはないでしょ。
が,ブルッフでの金川さんの存在感に圧倒されたまま(さらには,アンコールのバッハ「パルティータ第1番」 “サラバンド” にとどめを刺されて),メインのブルックナーを聴いてしまった。ので,フワフワしてて記憶が飛んでいる。
● というわけで,ダブルヘッダーの2つめも終了した。今からだと新幹線を使っても今日中にわが家にたどり着くことはできない。銀座のビジネスホテルを予約している。
このやり方がベストだったか,もっと上手いやり方があったか。先に述べたように,人様にはまったくお勧めできない。のだが,やってしまった。
やってしまった以上は,おそらくベストだったのだ。思考停止でいいから,そう思っておくのが,それこそベストというものでしょう。
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