すみだトリフォニーホール 大ホール
● 類まれな高水準の演奏を披露してくれるユーゲント・フィルハーモニカーの定期演奏会に出向くのは,これが5回目になる。
初めて聴いたのは第4回。第5回と第6回は聴いていない。今回のプログラム冊子には「ユーゲント・フィルの10年を振り返る」と題して,何人かの団員が思い出を語っている。その中で,特に興味深かったのは,東日本大震災があった年の第5回についてだ。
● 3月11日の8日後の19日に予定どおり開催したという。行きたかったね,これは。
が,行けるはずもなかった。わが家もけっこう被災したからな。屋根から落ちた大量の瓦。ひとつ残らず倒れたタンスや食器棚。停電,断水。ブルーシートをかき集めて屋根にかぶせる作業。
● 「ユーゲントは僕も含め福島県出身者が多いのよね,東京では自粛ムードみたいなものが漂ってて,被災地出身だからこそそれは大きな勘違いだ!って訴えたかったのも正直ある」という発言も。
わずか5年前。あのとき,ぼくも何か深刻に考えたはずなんだよね。でも,結果,何も変わっていない。生活リズムも震災以前のままだし,話していること,人から感じること,何もかもまるで変わってない。
● 開演は午後1時30分。チケットは1,000円(当日券の場合,前売券は500円)。
曲目は次のとおり。指揮は田中一嘉さん。
モーツァルト 歌劇「魔笛」序曲
R.シュトラウス ホルン協奏曲第2番 変ホ長調
ブラームス(シェーンベルク編) ピアノ四重奏曲第1番 ト短調
ホルン協奏曲のソリストは,青木宏朗さん。この楽団のメンバーだった。現在は,兵庫芸術文化センター管弦楽団のホルン奏者。
● 何も考えないでボーッと聴いていた。放っておくと何か考えたくなるのが常なんだけど,今回はそういうこともなく,ただボーッと。
シェーンベルクが管弦楽用に編曲したブラームスのピアノ四重奏曲第1番。初めて聴いた。ブラームスに駄作などあるはずもない。シェーンベルクのオーケストレーションの腕前も与って力あるに違いないんだけど,シェーンベルクをして管弦楽版に編曲してみようと思わせたブラームスの原曲の力。
● といって,原曲も生では聴いたことがない。これはあまり演奏される機会がないだろうから仕方がないとして,CDでも1回か2回かな。この程度の聴き手が聴くんだからな。
ほとんど完璧な演奏のように思われた。たぶん,聴き手としての自分がこの楽団に吞まれているんだろうな。対峙できるように聴き手として成長しないといけない。
とにかくたくさん聴くことだと思う。今のところ,それ以外の方法論は思いつかない。
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