これに比べたら宇都宮市文化会館の小ホールは中ホールと呼ぶのが正しい。それくらい,小規模なホールだった。
● ティアラ室内楽シリーズは今年から始まったのではないが,ぼくは初めての拝聴になる。11日の豊洲シビックセンターの演奏会でもらったチラシで知った。
室内楽と総称される小規模な演奏をできるだけ聴いていきたい。苦手を克服するなどという大仰なことではなく,室内楽を楽しめるだけの鑑賞能力はありません,という状態を脱しておかないとな,っていうね。
● CDを聴くという手はもちろんあるが(少しは聴いているのであるが),プロの演奏を録音で聴くよりも,アマチュアの演奏を生で聴く方がはるかに勝るというのは,オーケストラに限るまい。
生演奏でガッと捕まれてから,CDに入っていった方が入って行きやすいというか,挫折が少ないというか,まぁそんなサックリとした印象を持っている。
● 開演は13時30分。入場無料。室内楽で入場料を取るのは難しいんだろうか。
オーケストラに比べればコストがかからないのは確かだとしても,お金を払って室内楽を聴くという人は,やはり少ないんだろうかなぁ。
● 曲目は次のとおり。
メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第2番 イ短調
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第15番 イ短調
ブラームス 弦楽四重奏曲第3番 変ロ長調
ハイドン 弦楽四重奏曲第38番 変ホ長調
シューマン 弦楽四重奏曲第1番 イ短調
横百間川から見るティアラこうとう |
印象に残ったのはやはりベートーヴェンの15番で,何というのか実がある。身体を張ってる。骨身を削っている。それに比べると,メンデルスゾーンは才気に頼りすぎの感がある。と,まぁ,偉そうなヘラズ口を叩いてみた。
ブラームスは11日も聴いているわけだが,そのときとはまた違った印象。11日にはこれを聴いたあとに五重奏曲を2つ聴いて,そちらに印象が引っぱられてしまったようだ。この曲だけを聴くと,曲の華やぎやふくらみが際立って感じられるのだった。
● 11日に出てた人も一組登場。彼らが演奏したのがハイドン。ハイドンが弦楽四重奏曲をいくつ残しているのか知らないが,少なくとも38はあるわけだろう。
よくベートーヴェン以前の作曲家は職人,ベートーヴェンから芸術家になった,と言われる。ベートーヴェン以前の職人は部品をたくさん持っていて,それを組み合わせて曲を作っていた,と言われる(ことがある)。
そのとおりなのだろう。が,それにしてはハイドンのこの曲におざなり感は1ミリもない。弦楽四重奏曲の骨格はハイドンが余すところなく作りあげたのかもしれない。
● シューマンは最後は精神を病んでしまう。それを知っているせいか,どうもぼくらは,シューマンの作品に危うさ,頼りなさ,壊れやすさ,のようなものを探してしまいがちなのかもしれない。
この曲にそんなものは微塵も感じない。今にも倒れてしまうのではないかと思わせる弱い構造体ではなく,しっかりと建っているという印象だ。
● 聴き手として歯が立たない弦楽四重奏曲が,霧の中から楚々とした姿を現すのももうすぐだと思いたい。その手応えは,今回あった。
次は24日のムジークフェライン室内楽団の演奏を聴きに行くことにしている。紀尾井ホールで開催されるのに入場無料。これで完全に霧が晴れてくれるといいんだけどね。
● ところで,この室内楽の奏者は「アマチュアオーケストラ「ザ・シンフォニカ」有志と仲間たち」であるらしい。
ザ・シンフォニカといえば,先月,初めて定演を聴いた。あのオケの“有志”ならば,無条件で信頼するよ。
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