2019年12月19日木曜日

2019.12.15 新日本交響楽団 第103回定期演奏会

すみだトリフォニーホール 大ホール

● 新日本交響楽団は100回を超える定演を重ねているのだから,東京に数あるアマチュア・オーケストラの中でも重鎮というのか,名の知られたオーケストラなのだろう。
 が,ぼくは今回が初めての拝聴になる。

● 開演は13時30分。当日券(1,500円)で入場。曲目は次のとおり。指揮は橘直貴さん。
 ロット "ジュリアス・シーザー"への前奏曲
 ブラームス ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調
 ブラームス 交響曲第2番 ニ長調

● ハンス・ロットについては,ぼくは何も知るところがなかった。曲を聴いたこともなければ,CDも1枚も持っていない。
 今回の曲目解説によって,「"ジュリアス・シーザー"への前奏曲」は,25歳で亡くなったロットが19歳のときに作曲した曲であることを知った。
 Wikipediaによれば「不幸なことに,ロットはマーラーの堅忍不抜の精神を持ち合わせておらず,マーラーが生涯において数々の困難に打ち勝つことが出来たのに対して,ロットは精神病に打ちひしがれてしまう」と解説しているが,堅忍不抜の精神を持っているかいないかと精神病に罹患するかどうかは,ほぼ無関係だろう。こういう解説は害をなす。

● ともあれ,今回,初めてロットの曲を聴く機会を得たわけだが,ぼくにはいまいちピンと来なかった。が,彼の曲は演奏される機会が増えているらしい。
 CDを揃えるところから始めてみようかと思う。ネットで聴けるはずだと思うのだが,CDというユニットから自由になることが,なかなかできないでいる。

● ブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」のソリストは,石田泰尚さん(ヴァイオリン)と阪田宏彰さん(チェロ)。
 石田さんは不良高校生の学ランを連想させる恰好で登場。“石田組”と称して各地で演奏会を行っているのだが,ぼくは聴く機会を逸している。
 ヤクザ路線でのアピールは今のところ,巧くいっているんだろうかな。が,観客もいずれ飽きるだろうし,その前に自身が飽きてしまうかもしれないな,と思いながらステージを見ていた。喧嘩も弱そうだしなって。

● しかし,腕の方は,ぼくにはため息しかでない。はぁぁ・・・・・・という感じね。阪田さんと2人で盛りあげる,盛りあげる。
 けれども,オーケストラのレベルの高さがはっきりわかって,そちらの方にむしろ驚いた。ここのところをもう少し掘りさげてみると,驚きたいから驚いているのかもしれないんだけどね。
 ソロの名人芸より管弦楽に惹かれる性癖があるのだと思う。バレエでも花形ダンサーのウルトラCよりコール・ドを見たい。コール・ドがバレエの華だと思っている。
 ちなみに,石田さんと阪田さんのアンコールは,服部良一「蘇州夜曲」。

● ブラームスの2番。ベートーヴェンばりの“風に立つライオン”をやめたブラームスの,初めての交響曲といっていいだろう。
 ブラームス交響曲の真骨頂は20年を費やした1番ではなく,2番以降にあると思う。1番があるから2番以降があるのだと言われるだろうけどね。

● 勝手に溢れてくるように思われるメロディーが,細やかなラインでそちこちに散りばめられている。と,ぼくは勝手にそういう聴き方をしているのだが,ハイレベルな技術の演奏で聴くと,そのあたりがクッキリするように思われる。
 演奏は技術だけではないとは言いながら,技術だけではないのであって,技術を欠いた演奏など演奏ではないってことですか。

● ブラームスというと,ドヴォルザークにも親身なアドバイスを与えるなど,人の面倒見を惜しまなかった人という印象があるのだが,この演奏会の曲目解説で,そのブラームスがハンス・ロットには「才能がない」とこき下ろしたというエピソードが紹介されている。
 こき下ろされたのはロットの交響曲第1番なのだが,となるとその曲がどんな曲なのか聴いてみたくなるではないか。

● この時代,ブラームスは楽譜を見て,才能がないという最も厳しい言い方をしたのだろうが,ブラームスをもってしてもロットの才能を見抜けなかったのか,いややっぱりブラームスに共感するねとなるのか,聴いてみなきゃしようがないね。
 一度聴いたくらいでおまえにわかるのかと問われると,わからないだろうな。でも,とりあえず聴いてみないとね。こういう楽しみを得たのも,今回の収穫のひとつだ。

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