音楽の友ホール
● ヒエーッ,こんなのがあったんですか。1日でベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全曲演奏しちゃう。しかも今年で10回を数えるという。
11:00に始まって20:45に終る。7日は東京に泊まることになっているんですよ。行くしかないなぁ。
● 6部構成で約10時間の長丁場。1部ごとに感想や印象を書き留めておいが方がいいかもしれない。大晦日に東京文化会館で開催される全交響曲連続演奏会でもそんなことはしたことがないんだけれども,弦楽四重奏曲については曲ごとの独自性を捉えられる自信がないのだ。
1曲聴くたびに上書きされてしまいそうだ。ので,メモしておこうかと。
● にしても,この演奏会,今年で10回目になるのに,今までその情報をキャッチできなかったのは,ぼくの目が弦楽四重奏曲に向いていなかったからだ。
自分に無関係と思っている情報は,たとえ入ってきてもスルーしてしまう。そういうことだったのだろう。
● 以上のようなことを行く前には思っていたのだが,どうもそうではなかったようだ。過去の9回は一般公開はしていなかったっぽい。演奏する人たりが互いに聴きあうということだったのか。
今回の10回目でこの企画は終了するようでもある。1回だけ一般公開した今回の演奏会を運よくキャッチできたということだ。ラッキーだったかも。
● 会場の音楽の友ホールは神楽坂にある。音楽の友社が運営しているんでしょ。大仰な看板は出ていないので,うっかりすると通り過ぎてしまう。ぼくも通り過ぎた組だ。
だいぶ歴史を重ねてきたホールっぽい。古いホールだ。今となっては使い勝手に難があるかもしれないが,音楽界の文化遺産として保存すべきですかね。
● 演奏が始まっても騒々しさが収まらない。1楽章が終わるごとに客席に移動が発生する。どうも,客席にいる人の多くは奏者らしいのだ。
ホールに楽屋がないんでしょうね。あるいはあったにしても,客席で聴きましょうということらしい。
● すると,どうなるか。客席が楽屋になるんだね。
演奏が始まっても私語がやまない。演奏中にケースからヴァイオリンの弓を取りだして磨き始める人がいる。演奏中に立ちあがって後ろの席に置いた荷物からガサゴソと何かを取りだす人がいる。
● 観客も奏者の知り合いが多いらしい。知り合いの演奏が終わると帰って行く。
だから何ということではないんだけれども,これは客席の水準をダダ下がりにする最大要因だというのが,ぼくの経験則だ。
この時点で長居無用という結論に至った。せっかくだから20:45までいようと思っていたのだが,とても無理。
● とはいえ,聴けるだけは聴いていく。作曲順に演奏するらしい。第1部は3番,2番,1番。第2部は5番,4番,6番。第3部は7番,8番,9番。第3部ではその前にHess34(弦楽四重奏曲 ヘ長調 ピアノソナタ第9番の編曲)。
以上で会場を後にした。後期を聴かずに帰るのでは何しに来たのかと思わぬでもないのだが,ま,このあたりが限界だった。客席が楽屋になっているというのを別にしても,このあたりが限界だったか。
● 大晦日に東京文化会館で開催される全交響曲連続演奏会では,1番から9番まで指揮者もオーケストラも変わらない(メンバーの変更は一部あるが)。ので,小休止,中休止,大休止と休憩を挟みながらつないでいくのだが,こちらは1曲ごとにメンバーは交代する。
のだが,プログラム冊子によると,1~9回は2日かけてやっていたようだ。
● 今までに聴いた演奏の中で最も印象に残っているのは,2013年10月に宇都宮で聴いた兵庫芸術文化センター管弦楽団のブラームス4番だ。
われながらヘボな聴き手だと思うのだが,それまでブラームスがわからなかったのだ。わからないというか,ブラームスの曲を聴いても,これのどこにブラームスがいるのか,ベートーヴェンの曲だと言われたら信じちゃうよ,みたいな。
それが,この演奏を聴いている途中でこれがブラームスだっていうのが掴めたというか,パッとわかったというか。心臓がバクバクし始めた。ユーレカってなものだ。
● それと同じことをベートーヴェンのカルテットについて味わいたいのだ。つまり,現時点でぼくは16番まである弦楽四重奏曲について爪を立てられるところまで行っていない。
何が何だかわからない。ベートーヴェンの表情がまったく見えない。「千と千尋の神隠し」のカオナシが作曲したのかと思う水準にとどまっている。
● まとめて聴くことによって,少なくとも曲間の違いくらいは見えてくるかもしれない。作曲順に演奏するとなれば,変化も時系列で見えやすくなるのではないか。
CDでそれを試みたことがあるんだけれども,ダメだった。3日間で全部聴いたのだが(Hess34は聴かなかったけどね),何を聴いたのかすらわからないくらいの体たらく。3日もかけたんじゃダメなのかもね。
● 1日でしかも生で聴かせてもらえれば,どうにかなるのではないかという期待があった。第2部の途中で,それが来たかと思えた刹那があったんだけどね(4番の演奏が素晴らしかった)。でも,それを掴み切ることができなかった。指の間からさらさらと砂がこぼれるように消えてしまった。
第3部では9番の演奏が印象に残ったのだが(特に1st.VnとVc),その第3部でもその刹那が再びやってくることはなかった。
● ので,もう少し粘ってみようかとも考えたんだけど,ここはいったん退くことにした。この演奏会は次はないのだから,ここで退くと敗者復活戦もない。
のだが,大晦日は8年連続で聴いてきた全交響曲連続演奏会ではなく,弦楽四重奏曲の方のチケットを手当している。そこで何とかリベンジを。
● 結局ね,弦楽四重奏曲に限らず,室内楽曲というのは聴き手の質を問うてくるところがありますよね。何だよ,おまえヘボじゃん,ってね。
自分でもわかっているんだけどさ,それを自分以外の何者かに指摘されるとまったく面白くない。
● プログラム冊子もA5で本文68ページという大部なもの。定価350円とあるのはユーモアか。
今回の奏者は72名にのぼるわけで,彼ら彼女らがそれぞれの思いを綴るとこの量になる。
サッと目を通しただけだけれども,それぞれの人に歴史ありという感がして,面白かった。といっては失礼かもしれないけれども,催行する側にとってのメモリアル冊子になっているのだろうね。
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