宇都宮市文化会館 大ホール
● 黄金週間中に吹奏楽の定期演奏会を開催する高校が多いから,ぼくが聴くのもこれが3回目になる。3回とも会場は宇都宮市文化会館の大ホールなのだが,今回は1席おきではなく全席にお客を入れた(ただし,3階席を除く)。それでもみっしりと席が埋まった。
ぼくの隣にも少年たちのグループがいた。高校で吹奏楽をやっている少年たちのようだった。作新のこの演奏会は,彼らにとっても聴いておくべきものなのだろう。
● 開演は午後3時。入場料は1,500円。2019年までは1,000円だったから,今年から値上げということ。
が,それでもこれだけ入るのは,提供されるコンテンツがそれに見合っているかそれ以上の内実を備えているからだ。おそらく,2,000円にしてもお客は同じ数だけ入るのじゃないか。
● 今回の演奏を聴いての最終的な感想から言ってしまえば,現在の栃木県の高校吹奏楽は作新一強。追随できるところはない。ひょっとしたらと思わせる学校の演奏を聴いたことはある。それから数年経つが,残念ながらそういう状況には至っていない。
もちろん,追随する必要もないのかもしれない。何も競争しているわけではない。それぞれが楽しく充実していると思える活動ができていれば,それでいいわけだ。コンクール至上主義には批判も多い。
が,ある程度の高みに到達して初めて味わえる楽しさや充実感もあるはずだ。というより,ほとんどの習い事や稽古事はそういうものだ。勉強や運動だってそうだろう。波打ち際でチャプついていたのではそれだけのことで,沖まで出られるようになって初めて海の面白さがわかる。
しかも,その1年生の演奏が呆れるほど上手い。今の状態で県のコンクールに出ても金賞までは行く。
これほどの新入生を預かるとあっては,指導陣もウカウカしてはいられない。彼らをさらに伸ばし,結果をだしてやらなければ,「あなた方はアホですか」と言われてしまう。水準の高い生徒たちが指導陣を刺激し,その結果が生徒に帰ってくるという好循環もあるんでしょう。
● 出身中学校を見ると,もちろん宇都宮が多く,宮の原中が9人,泉が丘中が8人,高根沢町の阿久津中が8人という具合だけれども,黒磯,大田原,矢板,日光,烏山,真岡,小山,佐野など県内の各地から集っている。
さらに,茨城,埼玉,秋田といった県外からも作新吹奏楽部の門戸を叩いた生徒がいる。こういう生徒たちは吹奏楽をやるために高校に進学したのであり,そのために作新学院を選んだのだ。
それだけの実績と指導陣容を作新は作ってきた。顧問が1人ですべてを見るというのじゃなくて,パートごとに(コントラバスやハープまでも)指導者がおり,マーチングやダンス,カラーガードまで指導者がついている。
こうなると,作新に追随できるところがないのは不思議ではない。しかし,つけ入る隙きはないものか。ダンスではいえば大阪の登美丘高校は府立なんだけどね。
● Ⅰ部とⅡ部で演奏した曲目は次のとおり。その一々についてぼくが語っても仕方がない。間然するところがないと申しあげれば,それで終わりだ。
鈴木英史 自由の鐘は空に渡る
宮下秀樹 吹奏楽のための「エール・マーチ」
真島俊夫 富士山-北斎の版画に触発されて
B.ヒーレイ ファンタズミック!
真島俊夫編 シャンソン・メドレー~モンマルトルの小径
和泉宏隆 宝島
C.コリア スペイン
● Ⅲ部は例年どおりドリル。今回は「作新の風-Our Beautiful Days」と題して,高校生活を素材にした。もちろん,リアルではない。きれいに仕上げている。
ラインの動きなんか惚れ惚れする。曲から直へ,円から方へ,散から集へ。コーチがデザインしているのだろうが,コーチの頭の中にあるものを過たずステージで表現するのは部員の高校生たちだ。見事という以外の言葉が見あたらない。
● プログラムに掲載されている曲目の演奏がすべて終了してから,作新ならではの本番(?)が始まる。野球応援編。
これは甲子園常連の作新じゃないとできないもの。「栄冠は君に輝く」ロックバージョン(と彼等は呼んでいる)を歌う女子生徒には毎年感心する。吹奏楽部の部員は多芸多才じゃないといけないようだ。
野球部の部員がワイルドに反応するわけだが,それゆえ3階席は彼らを隔離するために確保してあった。感染対策。といって,彼らは基本的には礼儀正しい。期待される反応を期待どおりに行っているだけのようにも見える。
この野球応援編は作新のものだけれども,すでに作新1校の枠を超えて,栃木県の重要無形文化財の域に達していると思うのも,いつものことだ。
つまり,演奏会は必ず録音している。販売してコストを回収するためというよりは自分たちの振返りのためだろうが,こういうところまで抜かりがない。あるいは,ぼくが知らないだけで他校でもやっているのかもしれないが。
他にも,タオルやTシャツを販売する。ありていに言えば,タオルやTシャツを買うことは寄付をすることなのだが,あからさまに寄付を募るよりは,物販という商行為に仮託する方が品がいいとぼくは思う。
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