神奈川県立音楽堂
● 開演は午後2時。入場無料だが,事前予約制。事前予約というのは,インターネットがあるから成立するやり方だ。ネット以前(つまり20世紀が終わるまで)は,事前予約制でなければならないとなったら,演奏会を開催することはできなかったろう。前売券はあっても,事前予約は考え方として存在していなかった。
コロナ禍のこの時期,インターネットの恩恵をあらためて噛みしめることになっている。
● 初めての拝聴になる。この楽団のサイトによれば,「2003年にクラシック音楽好きが集まって結成された」楽団で,「メンバーは30~40歳代の様々な職種の会社員が中心」。「団員数は現在30名程度で,モダンオケとしては少ない」。
ここから得られる情報量は多くない。同じような楽団は他にいくつもありそうな気がする。聴いてみなければわからない。というか,聴いてみればわかる。
現在の諸々の規制はあなた方を守るためのものだ。あなた方を守るために,人の移動全体に網をかけている。結果,飲食業界や旅行業界は塗炭の苦しみに喘いでいる。
あなた方が動かないでいてくれれば,そんなことをする必要はないのだ。率直に申せば,食堂や居酒屋は自由に営業させていいのだと思う。営業規制を強いるのではなくて,営業してもいいから年寄りを入れるな,来ても追い返せ,入れたら過料だぞ,とやるのがいい。
● ただ,あなた方はお金とヒマの両方を持ち合わせている。あなた方が来てくれないと,こうした演奏会でも客席では閑古鳥が鳴いてしまう。そのあたりが痛し痒しではあるんだけれども,年寄がいなくなれば若い人が来るようになるんじゃないかなという,一縷の望みもあってね。
けれども,あなた方は出歩くのが好きだ。まだ体の自由が利く。仕方がない。出歩くのは良しとしよう。
● が,あなた方の口は締りが悪い。のべつ,だらしなく開いて,聞き取りにくい言葉を喋っている。家の外に一歩でも出たら完黙を貫いて欲しい。それができないなら,それこそ家から出ないで欲しい。今はそういう時期だ。
昔は,男子ひと度家を出ずれば七人の敵あり,と言われたではないか。七人も敵がいるのに,モヒモヒ,フガフガとやっていたら,あっという間に斬られてしまうではないか。モヒモヒ,フガフガはやめよ。しっかり四方に気を配れ。
● 曲目は次のとおり。指揮は今井治人さんで,第1回からすべての演奏会を今井さんが指揮している。
ブラームス 悲劇的序曲
ビゼー 交響曲 ハ長調
ドヴォルザーク 交響曲第6番 ニ長調
● この時期にこのプログラムはかなりの重量級。いい練習ができたんだろうか。
「悲劇的序曲」を聴いて,たしかにいい練習ができたのだろうと思った。というか,元々のレベルが高いんでしょうね。少ない練習でここまで仕上げてくる能力があるんでしょう。
● もう一点,今井さんの指揮。ぼくに指揮の何がわかるわけでもないのだが,端正な指揮をする人だ。無駄な動作がない。たとえば,髪をかきあげるとか,下半身で意味のないステップを踏むとか。
ポイント,ポイントがわかりやすい。どこで入ったらいいのかその指揮じゃわからないでしょ,と思える指揮者にもときたまお目にかかるが,そういうのとは無縁だ。
おそらく,奏者にもメリハリのある指揮だと映っているのではなかろうか。そういう指揮は身体パフォーマンスとして見ていても,鑑賞に耐えるものだ(→ 本当か)。
● 「交響曲ハ長調」はビゼーが17歳のときの作品であることを,今回の曲目解説で知った。生で聴く機会はそうそうない曲だけれども,何だかんだ言って,やっぱりオーボエですかねぇ。
そのオーボエが雅なのは,曲がそうなのか演奏によるのか。
● 対して,ドヴォルザーク6番ではフルートの妙が印象的。アンサンブルも精緻で,音に厚みが増していっても輪郭が滲むことはない。技術が確かなんだろう。
あと,ホールとの相性がいいんだろうかな。小規模なオーケストラと神奈川県立音楽堂との相性。あるいは,曲との相性。ホールも力を貸してくれているような気がした。
● これで無料でいいのかね。千円やそこら取るのに手間をかけたんじゃ合わないから無料でいいよ,ってことですかね。ひょっとしたら募金箱を置いてカンパを募っていたんだろうか。だとしたら申しわけないことをした。気が付かなかった。
いや,この時期にそれはやらないでしょうね。正真正銘の無料だったんでしょ。申しわけなさを感じつつ,音楽堂を後にした。
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