ミューザ川崎 シンフォニーホール
ではというので,ミューザで開催されるこの演奏会のチケットを買った。席はS,A,Bの3種。S席を奮発した。2,000円。
● プロースト交響楽団の演奏は一度聴いているつもりでいた。都内でも有数の上手な楽団だと思っていた。けれども,それはぼくが勝手に作ってしまった記憶のようだった。
こういうとき,聴いた演奏会のすべてをブログの形で記録にしておくと,何かと便利なものだ。Googleの検索エンジンで検索できるんだから。
で,Google先生が,おまえがこの楽団の演奏を聴いたことは過去に一度もないぞ,と教えてくれるわけだ。
● しかし,ある記憶はあるのだから,いかんともし難い。たぶん,どこかで聴いたのをプロースト交響楽団のものと思い違いをして,それが脳内に定着してしまったのだと思うが,残っている記憶がけっこう具体的だから厄介だ。
いや,逆に,実際に聴いているのならこれほど具体的に憶えているはずがないという,妙な確信もある。ここまで憶えていられるなら記録を残しておく必要もない。それ以前に,そんな記憶力が自分にあるはずがない。
というくらいに具体的な記憶が作られてしまっているのだ。困ったものだ。
● というわけで,初めての拝聴になる。楽団のサイトによれば,設立は2003年4月。「首都圏の大学オーケストラや第18回全日本大学オーケストラ大会合同演奏出演者が中心となって結成」された。「団員は130名程度」とのこと。
当初はマーラーの2番を演奏する予定だったらしい。「復活」公演にしたかったのかどうなのか。が,コロナが思いの外,おとなしくなってくれなかった。
「復活」は合唱が入る。この状況では厳しかったろう。それで曲目を変更。次のとおり。指揮は大井剛史さん。
ロッシーニ 歌劇「アルジェのイタリア女」序曲
ショスタコーヴィチ 交響曲第9番 変ホ長調
ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調
● 演奏で飯を食っているわけではないという意味でアマチュアだけれども,腕前はセミプロ級だ。洗練されている。
その洗練が何から生じているかというのもハッキリしていて,アンサンブルが緻密だからだ。巧いからだ。巧さの先に洗練がある。技術の賜物だ。したがって,おいそれと模倣できるものではない。
実際に聴いてみての感想が,自分が捏造していた記憶とそっくり同じというのも,何だか妙な感じがする。が,逆に符合が合っているような気もする。
● 純度の高い「運命」を聴きながら,この曲はひょっとしてひょっとすると,ノイズのある少し泥臭い演奏の方が説得力を持ったりもするのかなと思ったりした。
しかし,それはピントが少し合っていない写真に柔らかさを感じるようなものであるのだろうとも,同時に思う。
● アンコールはなしでサッと終演。コロナのせいかもしれない。この楽団は毎回そうなのかもしれない。
プロっぽい。日本のプロオケはアンコール曲を演奏することが多いようにも思うんだが。
今回に関しては,アンコールなしがありがたい。このベートーヴェンを聴いたあとに,何か別の曲を聴きたくはない。この余韻を抱えたまま,ホールを後にしたい。
● プログラム冊子の曲目解説も,曲目解説というよりは一編のエッセイのようなものに仕上げてある。一読の価値がある。演奏会に来れなかった人もプログラム冊子だけ入手して読めればいい。一番いいのは,PDFにでもして楽団のサイトに上げてもらうことだが,そういうことはしていないっぽい。
ただ,ここが難しいところなのだが,こうした趣の解説は一度読めばいいのであって,二度三度と繰り返して読むには及ばない。
チケットはミューザのカウンターで買ったのだけど,スタッフの話を憶測を含めてまとめると,ミューザに委託される座席は最初から周辺部になるっぽい。
ので,楽団に直接予約するのが正解かも。今回はその余裕がなかったんだけど,結果的に当日券があった。当日券を買うのが正解だったでしょ。最後にセコい話で申しわけない。
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