杉並公会堂 大ホール
● 日本は音楽大国である。というときに,例証としてよく用いられるモノサシが3つある。
ひとつは,日本では4世帯に1世帯がピアノを持っていること。こんな国は日本以外に世界のどこにも存在しない。
● ただね,使われることはまずない。家具のひとつだ。ひと昔かふた昔前の,応接間(この言葉,もう死語ですよね)に置かれた百科事典と同じ。
けれども,使わないながら,オブジェとしてピアノを選ぶ心性には少々興味を引かれる。
● 2番目は年末の第九。この時期に日本国内で演奏される第九は数知れず。そのほとんどが満席になるほどお客さんが入る。
したがって,日本人の第九消費量は膨大なものになる。日本人の胃袋はどうなっているのか,そんなに強靱なのか,という話になる。
● けれども,それ以上に驚くのが3番目だ。つまり,アマチュア・オーケストラの数の多さと,活動の活発さ。
市民オケ,学生オケ,企業オケ。全部でいくつあるのか。正確に数えた人はいないだろう。“Freude”に載っているのがすべてではない(栃木県でいえば,峰ヶ丘フィルと那須室内合奏団が載っていない。中高校のオーケストラ部とジュニアオケも)。
2,000ではきかないだろう。3,000はあるかもしれない。それらのアマオケが年に1回か2回,演奏会を開催する。となると,1年間に開催される演奏会は5,000といったところか。とんでもない数になる。
数だけではない。マーラーやブルックナーをやってのけるところもあるんだから。
● その演奏会の大半は,土日か祝日に集中する。それらを容れられるだけのホールが存在するわけだし,それを聴きに出かける人たちもいるわけだ。
これをもって,音楽大国といわずして何というか。
● それらあまたあるアマチュア・オーケストラの腕前はピンキリだ。ひと言でアマチュアといっても,プロ並みといってもいい奏者を集めている楽団もあるだろうし,自分たちの楽しみのためにやっているところもある(それで全然OKだと思うが)。
で,そのアマチュア・オーケストラの上位に列する楽団の演奏を聴くと,プロオケはなくたっていいんじゃないのと思うこともあってね。だって,これで充分だと思うもんね。これ以上の演奏は,自分にとっては馬の耳に念仏だってね。
実際は,プロにもいてもらわなくては困るんだけど,理屈をこねてプロオケ不要論をでっちあげようと思えばできなくもないな。
● 合奏団ZEROの演奏を聴きながら,以上のようなことをつらつら思った。
開演は午後2時。チケットは1,000円。当日券を購入した。指揮は松岡究さん。
● ブラームスの「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調」。ソリストは米沢美佳さん(ヴァイオリン)とクライフ・カナリウス氏(チェロ)。ベルリン・コーミッシェ・オーパー管弦楽団のコンサートマスターとソロ首席奏者であり,妻と夫の関係でもある。
管弦楽団もきちんと応接していて,メリハリもあればきめも細かい演奏。危なげがないんですよね。安心して身を任せることができる。もう,どうにでもして,っていう感じ。
● ブルックナーの4番。ブルックナーを取りあげるのは初めてらしい。合奏団と名乗っているのに,管のレベルも素晴らしい。
気がついたら終わっていた。ひじょうに短く感じた。
● まぁ,どうでもいいっちゃどうでもいいことなんだけど。
スタッフがP席にもお客さんを案内した。とにかく空きがないんだから。
ところが,P席で大股開いて居眠りを決めてる人がいてね。けっこう,気が散るね,これ。正面に見えるんだから。当然,指揮者にも見えるだろう。
P席は客を選ぶかもしれないと思った。
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