宇都宮短期大学 須賀友正記念ホール
● くるみの会音楽振興会というのがあって,それが創立40年を迎えましたよ,と。その特別演奏会を開催しますよ,と。
そのくるみの会がどういう経緯で設立されてどんな活動をしているのか,詳しいことはぼくは知らない。
● この演奏会を聴いてみようと思ったのは,著名なピアノ協奏曲が4つも聴けるから。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 ハ短調
グリーグ ピアノ協奏曲 イ短調
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調
ウェーバー ピアノ小協奏曲 ヘ短調
● 開演は午後2時。チケットは2,000円。
● バックを務める管弦楽が素晴らしかった。「くるみの会音楽振興会が主催する栃木県ピアノコンクールのコンチェルト部門本選会でのオーケストラパートを受け持つために2009年に結成されました」とあるんだけれども,指揮は増井信貴さんで,コンサートミストレスは北川靖子さん。ファゴットには東京フィルの古澤真一さんがいるし,ヴァイオリンには大久保修さんの顔もあった。宇短大の先生方も加わっているようだ。
栃木県ピアノコンクールのためにここまでのオーケストラを設えるのは,くるみの会の実力か。
● この管弦楽を聴けただけでも,2,000円の元は充分以上に取れた感じ。この管弦楽で,ベートーヴェンのピアノ協奏曲を2つも聴けたんだから。
管弦楽の質の高さを堪能できたことと,ベートーヴェンの怪物性を再確認できたことが,今回の演奏会の収穫。
かつてなかった交響曲を9つも作り,弦楽四重奏曲を16,ピアノ協奏曲を5つ。とんでもない多作。量は質に転化するというけれど,転化を待つ必要もない。ベートーヴェンの場合は。最初から質を備えているんだから。
● まずはベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。管弦楽が主旋律を重厚に奏ではじめる。これで掴みは充分だ。曲の然らしめるところだけれども,その曲を支えるのがオーケストラの表現力。
ピアノは宇短大附属高校1年の飯野愛純さん。曲が進むにつれて,彼女がどんどんきれいになっていく。もちろん,こちら側の錯視ということになるんだけど,不思議な光景を見るような気がした。
● 次のグリーグでは,第1楽章のみ宇大2年生の阿部光希さんが弾き,あとを松本明さんが引き継いだ。さすがに位が違う。彼のピアノを聴けたのも,また今回の収穫。
● ベートーヴェン5番のピアノは鈴木奈穂さん。この曲はあまりに高名だけれども,ぼく的には3番のほうが好きだ。食いついていくのにとっかかりがあるっていうか。
食いついていくという聴き方はどうなんだろうという問題が別にあるけれど。
● ウェーバーのピアノ小協奏曲。ピアノは坪山恵子さん。ここまでの演奏ができるようになるまでに費やした時間と労力を考えると,ため息がでそうになる。
分け入って行くにも勇気が必要な分野かもしれないなぁ。どんな分野でもそうかもしれないんだけれども,音楽の演奏ってそこのところが見えやすいんだと思う。
趣味でやっている分にはいいけれども,これを仕事にしようとするところまで行くと,茨の道を覚悟しなければならない。
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